黒い重箱のふたを開けた時に広がる、色とりどりのおせち料理が敷き詰められた様は大変華やかで美しく、見る者を魅了します。
重箱に詰めるのは「福が重なるように」という意味のほか、ほこりや虫から料理を守り保存するのに適していたからだという理由があります。また、積み重ねられるのでたくさんの料理をコンパクトに用意できるという利便性から、家庭に広く普及しました。
おせちが重箱に詰められるようになったのは江戸時代の後期からで、その頃は「喰積(くいつみ)」と呼ばれていました。
神様にお供えするための、「おせち」と呼ばれる御膳に配された料理は奈良時代からありましたが、時をへて、重箱に詰められた料理の方を「おせち」と呼ぶようになったのです。
諸説ありますが五段の重箱に詰めるのが基本で、最近では核家族化が進み「食べきれない」「面倒だ」などの理由から三段の重箱を用意する家庭が多くなっています。五段の重箱は、上から「一の重」「二の重」「三の重」「与の重」「五の重」と数え、四段目は「四=死」のイメージを避けるため「与」の漢字があてられています。
「一の重」には黒豆などの祝い肴を、「二の重」には伊達巻や紅白なますなどの口取りや酢の物、「三の重」には海の幸が中心の焼き物、「与の重」には山の幸が中心の煮物を詰めます。「五の重」には神様から授かった福を詰めるために空にしておきます。こうした粋な計らいが、より食を楽しくすると言ってよいでしょう。